重大な事故につながる離設を防ぐため、介護施設ではハードとソフトの両面からさまざまな対策を講じています。
ハード面での取り組みとして代表的なのは、出入り口のセキュリティ強化です。暗証番号式のオートロックや、入居者が扉に近づくとアラームが鳴る離床センサー、顔認証システムなどを導入する施設が増えています。これにより、物理的に外へ出にくい環境を整えることができます。
しかし、行動を制限するだけの対策では、入居者のストレスや不安を助長しかねません。そこで重要になるのがソフト面、つまりスタッフによる心理的なサポートです。離設の兆候を見逃さないよう、日頃から入居者の様子を細かく観察し、落ち着きがない時や外に出たがるそぶりを見せた時には、いち早く声かけを行います。
「一緒にお茶を飲みませんか」「手伝ってほしいことがあるのですが」といった声かけで気を紛らわせたり、施設内で簡単な役割をお願いしたりすることで、承認欲求が満たされ、外へ向かう気持ちが落ち着くことが多くあります。
さらに、なぜ外に出たいのかをスタッフ間でカンファレンスを行い、アセスメントを通じて根本的な原因を探ることも欠かせません。入居者一人ひとりの生活歴や性格を把握し、「ここは安全で、自分がいても良い場所だ」と感じてもらえるような温かい居場所作りを進めることこそが、離設を未然に防ぐための最も効果的で本質的な対策といえるのです。これは、介護スタッフ個人ではなく、施設全体で取り組む必要があります。